ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 653
「でもお袋たちが出産したのは、親父の田舎だったんじゃないのか?…」
「いや俺の田舎じゃなくて、知り合いのところさ…」
「確か…先生がお世話になったという…」
「あれ?…弥生さんも知っていたの?」
「もちろんよ。私と操は産まれた時からの親友なのよ!」
いや、そこまで長い付き合いだったとは知らなかったよ…
「まあ事情が事情でなぁ」
「親父も大変だったんだな」
「まあ、そういうことだ」
それを言ってしまえば、僕の方だって…
「俺だってビックリしたさ、教え子の彼氏が自分の息子だなんてな」
「親父はいつ頃から知ってたんだ?」
「始まった当時から気づいてはいたが、そんなこと認めたくは無かったさ…」
「ふふ…先生だって似たようなもんじゃないですか…」
「へぇ?…弥生さんそれってどういうことです?…」
「うぉい;…それはだな…」
「先生ぇ…もう時効だから匠くんに言っちゃいますけど、さっき言ってた先生の田舎の知り合いって、歳上の綺麗な人でしたよねぇ〜」
うぇ?…親父がお世話になった田舎の知り合いって、歳上の女性だったの?…
「地元の診療所の先生でね、綺麗な人だったのよ」
「そうなんですか」
「おいおい、もう昔の話だから…」
「なるほど、親父の初恋の人とか、そんななのか」
「いや、そうじゃなくてだな…」
弥生さんからも僕からもそう言われ、親父はしどろもどろになる。
「それじゃあ何処で知り合ったんだよ?…親父の田舎に近かったとか?…」
親父は話しを切り上げたそうなのは分かったけど、僕は更に突っ込む。
このままうやむやにされると、またいろいろ妄想しちゃいそうだもんね…
「まあそんなところだ…県は違うが、そう遠くは無かったからな…」
親父は観念したのか?…重い口を徐々に開き始めた。