ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 648
「へぇーすごいなぁ椿ちゃん」
「形もよくできてるし、焼き加減もちょうどいいのかな」
「ホントだ、美味しい!」
椿ちゃんお手製のお菓子を食べながら口々に絶賛する妹たち。
「いやあまたお上手になられましたか椿ちゃん」
「香澄さんもどうぞ!」
「将来はパティシエかしら?…」
「いいえ、私はいいお嫁さんになるのが目標なんです。…」
へぇ〜今の子にしては、随分と可愛いこと言うんだね。
「あらそうなの?こんなに上手なんだからもったいないじゃない…」
「もったいなことなんかありませんよぉ、旦那さんの為に美味しい料理を作って、それで喜んで貰えたら、きっと幸せですもん…」
この言葉、弥生さんが聞いたらどう思うかな。
弥生さんは椿ちゃんが自分の後を追いかけてパティシエになろうとしてると思い込んでいるようだし。
「お母さんのようになりたいって思ってない?」
香澄が椿ちゃんに核心を突いてくる。
椿ちゃんはニッコリ笑って首を横に振った。
これはこれは…
微妙な年頃だし、母親と同じような道を歩みたくないと考えるのも当然かもしれないよな…
「まあまだ先は長いし、将来のことはこれからじっくり考えればいいんじゃないか?」
そう、僕なんて28にもなって始めて営業という職種に着いたんだもんね。
しかも興味もなかった男性用下着の世界だし;
「そうねぇ、いいお嫁さんになるためには、今から男を見る目を養っておかないとぉ。」
おい香澄;、そっちかよ1;…
「ふふっ、そのときはよろしくお願いします、先生!」
先生?香澄が?
「わかりました。そのときはしっかりと椿ちゃんにお教えいたしましょう」
…いや、僕しか男を知らない君に説得力があるのかどうかって…
「みんな、椿が迷惑かけてないかな?」
リビングに、不意に聞こえた声。
「弥生さんだー!」
「お久しぶりです〜」
お袋と2人きりでの話は終わったのか、弥生さんがリビングに現れた。