ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 629
「お父様に何か相談があって来たんですよね?…」
「ああ…でも操は、眠くなったと言ってすぐに帰っていったんだけどな…」
「親父と美恵子さんを残して?…」
「後から聞いたんだが、初めっからそのつもりだったらしい…俺と鈴田を2人っきりにするのに、夜の学校はうってつけだった訳だ…」
美恵子さんが親父に気があったのは本当だったのか…
「その後は何があったのです?」
「ああ…鈴田は僕の仕事を手伝ってくれた…疲れた頃にコーヒーも入れてくれたし…」
親父は当時を懐かしむ。
「その仕事が終わった後だな…鈴田から告白されたのは」
やっぱりそういうことか…
「女子高生が若い先生を好きになる…よくあることかもしれないよな…」
「ああ今になったら分かるが、何分あの時の俺は若かった…」
大学出たてってことは、22か3ってことか…
「身体の関係を求められ、どうしてもそれを拒むことは出来なかったんだ…」
そこでか…
やはり美恵子さんが親父のことが好きだってのは本当の話だったか…
「告白してくれたのは素直に嬉しかった、でも、鈴田がそこまで求めてくるような子だとは正直思わなかった」
「…したのか?」
「…ああ」
親父は小さく頷いた。
「教師として失格なのは分かっている…破廉恥教師だと後ろ指をさされるも当然なことだ…」
世間からそんな言葉を親父が受けたのは、お袋とのことでは無かったのか?…
「そのことは、周りの人に知れ渡ったのか?…」
「いいや、知っているのは当の本人、俺と鈴田だけ、操にすら言わなかったんだ…」
その罪の意識から、後にお袋を守ったということなのか?…