ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 626
あららら…そうだったのね…
お袋と妹たちは友達みたいに仲がいいので、そういうことも多々あったけど…
「おや、そちらのお嬢さんは…」
親父も恋ちゃんの存在が気になったようだ。
「あ、柳ヶ瀬恋と申します…香澄お嬢様のお屋敷で働いておりまして」
「そうかそうか」
親父は嬉しそうに微笑んだ…
恋ちゃんが昔親父が振った彼女の子供だと知ったら、どんな顔をするんだろうか?…
「親父…ちょっと聞きたいことがあんだけど、いいかな?…」
返ってお袋がいない方が…僕には都合がよかった…
「どうした、そんな真面目な顔して」
「いや…ちょっと親父に聞きたいことがあってさ…」
親父は話の重大さをまだ知らないようだ…まあ仕方ないかもしれないけど。
「家の前で立ち話もアレだから、中に入ってしようか」
「すいません、お父様」
「いやいや構わないさ、香澄ちゃんも歩いてきたなら疲れただろ…アイスティーでも入れるからゆっくりするといい…」
親父は変わらず優しかった。
この人の実の息子で無いことが、やっぱり残念に思えてならない…
「素敵な人ですね…何だか意外でした…」
恋ちゃんが小さな声で呟くように言った…
恋ちゃんにとってみれば自分の母親を捨てた男なのだ。
悪いイメージを持っていても仕方ない。
親父は人数分のアイスティーを作ってテーブルに並べた。
リビングに4人、ソファーに座る。
「実は、お父様にお話…お聞きしたいことがありまして…そのために恋ちゃんにも協力いただきました」
香澄が落ち着いた口調で話し始める。