ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 613
へぇ〜流石香澄はこの家のお嬢様だって訳だな…
「それならさ、あの秘密の部屋の鍵も持っていたりするの?…」
僕は啓くんが涼香さんに開発されたという、あの部屋の存在を思い出した。
「あそこですか…匠さん、興味があるんですか?…」
「い、いや、まあ…そういうわけじゃないけど…」
「ふふっ、匠さんはやはり男の人ですね」
…どういう意味だ。
「あそこはお母様の専用ルームでした。私も入った記憶がありません」
「へぇ」
「誰もその部屋のことは教えてくれませんでしたし」
まあそうだろうねぇ。
「あと、私は、人を痛めつけるのは得意ではないですし、できることならしたくないです」
…どういう部屋なんですかそこは。
「…匠さん、その部屋に行くことが今は目的ではないでしょう」
「ああ分かっているよ…ただどうなんだろう?ってちょっと思っただけだから…」
「ふふっ…なんか言い訳しているようにしか聞こえませんがぁ〜」
ニヤケ顔で僕の顔を覗き込んでくる香澄…
立場は完全に貴女様が上ですよ;…
「さぁ!こんな所で油売ってないで、早く鈴田巧のこと調べようぜ!」
僕は自分のせいなのを棚に上げ、まるで香澄がグズグズしていたかのように香澄を促した。
「ああ、その方も巧さんって言うんですね…」
「名前も聞いてなかったの?」
「そういう問題じゃなかったんで。あのときの私は、お見合いをすることが嫌だったんです」
…どうも今日の香澄は機嫌がコロコロ変わる。
お見合いの話はあまり触れないほうがよさそうだ。
「とりあえず、彼女のお部屋を見てみます?」
「ああもちろん。運よければ僕そっくりだと言う男の顔が拝めるかもしれないんだからね…」
「お見合い写真ですかぁ〜?…まだ残っているかしら?」
「うん、普通はお見合いを断った時点に返すもんだろうけど、あの当事この家は香澄の家でそれどころじゃ無かっただろうからね…」
「返しそびれてるってこと?…」
「ああ…その可能性は充分にあると思うんだよね…」