ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 584
「私にとっての巧お兄ちゃんは、多分白馬に乗った王子様…現実味は無いのかもしれません…」
「子供の頃の初恋ってことなのか?…」
「そうですね…綺麗な思い出が美化されているんじゃないかな?…」
「それゃあ鈴田巧だって生きいる男だからな…オナニーだってするし、セックスだってするさ…」
「ふふ…そうですよね…きっと匠さんと一緒ですよぉね。」
エリカちゃんがニコリと微笑む。
同じ男だからきっとそうだと軽く言ってしまったけど、悪い反応ではなかった。
まあ、きっと彼だって聖人君子ではあるまいし。
「でも僕は『そう思ってる』わけだね?エリカちゃん」
「うふふ…匠さんのほうがより身近に感じられるんですもん」
「そう言って貰えると嬉しいけど、その白馬の王子様だって僕と大して変わらないと思うぜ…、もう随分会ってはいないんだろ?…」
「はい…鈴田のお家を出た時からずっとですから、もう何年もです…」
「その間に美恵子さんとは会っていたんだろ?…」
「はい…巧お兄ちゃんは海外に留学がしてしまっていたから、会いくても会えなくて…」
そりゃそうだろう。
一度家を追い出される格好になった人間と会うなんて、親としては以ての外だ。
それでもエリカちゃんの未練も、まあ理解はできる。
そんな気持ちが僕を変えたのだろうか。
「僕は鈴田巧ではないし、鈴田巧にはなれないけど、エリカちゃんの近くにいるから…」
そう言って僕はエリカちゃんを抱きしめる…
額と額を合わせ…鼻の頭と鼻の頭を合わせた…
「ずっとですよ…お願いだから私を独りにしないで…」
エリカちゃんの熱い息が僕を刺激する…
「約束するよ…どんなことがあっても、僕はエリカちゃんの側から離れたりはしないから…」
唇の先と先が触れ合い…僕はそのまま顔を迫り出した…