ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 545
「手入れとか、気にしたことすらないですよ…」
他から言われたことすらもないからねぇ。
「職場は女性がほとんどだと聞きましたよ」
「そこまで見てくる人なんていませんよ」
「そうですかぁ…」
杏さんは視線をそこから離さない。
「匠さんが頑張って、一生懸命に働かれているんだなとわかって、なんだかホッとしました」
「あ、まあ頑張ってはいるんだけど、空回りばっかりで…」
なかなか契約が取れないのが辛いところなんだよな;
「頑張っていれば、きっといいこともありますよ…」
陰毛を触っていた指先が、その下の膨らみへと移動してきた…
「あ、そういえば…今スズタコーポレーションに営業掛けてんだよ。」
杏さんの指先は、その弾力を確かめるように、押したり引いたりを繰り返している…
「そうだったんですねぇ、それで匠さん、しきりに美恵子さんや息子さんの話を聞いてくるんですね…」
「うん…たまたま商談の席で相対したのが、彼と付き合ってたって女の子でね」
杏さんは少し驚いた顔をした。
ちょうどいい、そこで這い回る指が離れる。
「その方、お名前は」
「三枝美咲さんって言う方でね」
「あらぁその方だったら、美恵子さんから聞いたことがあるは…」
杏さんはまたしても意外そうな顔をした。
確か巧の母親である美恵子さんに邪魔されて、2人は別れることになったんだよな…
「美恵子さんは美咲さんのこと、何って言っていたんですか?」
「ええ、まだ若いのに頭の回転も速くて仕事のできる子だと褒めていましたね」
確かに僕と同世代か少し年下という感じだな。
なんだ美恵子さん、かなり高評価だけど、何か気に入らないことがあったのか?
「ただ、田舎の貧しい町で育った彼女を息子さんの相手にはしたくなかったみたいですね…」