ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 543
「ふふ、気にするのはそこですかぁ?」
頬を赤く染めた杏さんが僕に聞いてくる。
…いい感じで出来上がってきてるなぁ、こっちはセーブしてるのに。
「ああ、男なのに女みたいなことさせられているんだよ?そりゃ恥ずかしいことに決まってるよ…」
嘘は言っていない。
「まあ、そうでしょうね…」
杏さんはそう言いながらまたグイッとカクテルを飲み干す。
「それが狙いってこともあるぅのかな?…」
セーブしているとはいえ、相当度数の高いアルコールに酔いを感じてくる
「そうですね…浮気しないように、相手の男の人の陰毛を剃ったて子の話しは聞いたことありますよ…」
杏さんは僕のまだ入っているグラスに、並々とアルコールを足した…
まだまだ呑むつもりですかね…
杏さん、こう見えて底なしの気配が漂ってきた。
「女って、怖い生き物ですね」
「ふふ、女にとっては男も一緒ですわ」
杏さんの端整な顔が仄かに赤く染まり、きりっとした瞳はトロンとした感じで僕を一点に見つめる。
僕は表情を強張らせながら、腰を上げる…
「ちょっとトイレに…」
そう言いながらもアルコールに脚を取られ、その場にヘタリ込んでしまう;…
「やだぁ酔っちゃいましたぁ?…」
杏さんはニッコリと微笑みながら、僕の額に手の平を宛てがってきた。
「いやぁ…面目ない…」
目の前の笑顔の杏さんに、何故だかタジタジになってしまう。
「もう無理でしたら構わずに…身体にも悪いですし」
「杏さんは大丈夫ですか?」
「ふふふ、ご心配なく」
立つ力がほとんどない僕に、杏さんが肩を貸してくれた。