ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 52
…ただ、ここはどうやら利用OKのようだ。
それを確認してから、僕は後ろではしゃいでいる二人を呼んで、好きな部屋を選んでもらう。
…僕としたい、と決めたのは二人だからな。
宛がわれた部屋に向かう。
キュ、と服の裾を後ろから掴まれた。
振り向くと、さっきまでの表情が一変した桜ちゃん。
「その…よろしくお願いします」
香澄ちゃんには聞こえないくらいの、消え入りそうな声でそう言った。
…そうだよな、始めてなんだもんな…
こんな形で、こんな僕とでいいのか?とも思ったけど、勇気を持って踏み出さないと経験できないことって、案外世の中にはいっぱいある…
セックスに関してだって…それはいくら容姿が良くったって、性格が良くったって、そんなことは関係なくて、自分の覚悟を持った勇気が無ければ、一生経験しないで人生を 歩むしか無いんだ…
(こちらこそ…)
僕は桜さんに向かい、音は出さずに、口だけを動かしそう言った。
「ここですね〜」
桜さんの緊張を知らない香澄ちゃんは、ノリノリで部屋の鍵を開ける。
「はーっ!!」
何をそんなに気合を入れる必要があるのか。
「へぇ〜、中はこうなってるんですね〜」
…僕も久々に来たからな。
「匠さんっ♪」
入るなり、香澄ちゃんは僕に抱きついて、キスを求めてきた。
ツンと唇を尖らし、目を閉じる姿は確かに可愛いい…
…だからといって、桜さんの前でいきなりに香澄ちゃんと初める訳にもいかず
僕はどうしたもんか…と途方に暮れる…
「私のことでしたら…お構いなく…、初めはお嬢様となさってください…」
…と、言われましても、ハイそうですかって訳にもいかないっしょ…
「そんな遠慮は止めましょう。 ここではメイドもお嬢様も関係なく、僕にとっては可愛い二人の女の子ですから…」
「桜ちゃん~匠さんの言う通りだぁよ~、ここでは私のことお嬢様だなんて思わずにぃ、友達と思って欲しいなぁ〜」
「お嬢様…」
「ダメだぁよ〜お嬢様じゃなくてぇ、匠さんみたいに香澄ちゃんって呼んでぇください…」
僕みたいに、と香澄ちゃんは言う。
…だが、考えてみると、桜さんは香澄ちゃんの遊び相手として青山家に引き取られたのだ。
昔は普通に呼べていたのかもしれない。
「桜ちゃん」
「は、はい…」
「昔みたいに、私の、友達みたいに…」
「お、おじょ…あ、あ、いえ、えと、か、香澄、ちゃん…」