ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 508
「僕も本当の父親である和彦さんと一緒に暮らせれば、もっと近しくなれると思うんですよね…」
そう言いながらも、もしかして和彦さんは、実は自分の父親では無いかもしれない…という不安が頭を過ぎる…
それなら、本当に本当は…親父が父親なのか?
それとも、僕の知らないもっと別の誰かが父親だったりするんだろうか?…
わからない。考えれば考えるほどわからなくて、頭の中が混乱していく。
それは和彦さんだって一緒かもしれないのだけど。
「そろそろ夕食ができる頃だな…行こうか」
「はい…」
「そんな落ち込んだ顔、するもんじゃないぞ…?」
和彦さんはそう言って笑った。
そうだ…香澄にこんな顔見せる訳にはいかない。
僕がしっかりしなければ…
「まあこれでもぐっと煽って、楽しく行こうぜ…」
そう言って和彦さんはグラスにウォッカを注ぐ…
僕は和彦さんに向かい無理に頬を上げ、それを一気に飲み干した。
「…目は覚めたかい?」
「一応、ですかね」
「君も私も、強く生きねばならない…この先どうなるかなんて、予想できないからね…」
「はい…」
和彦さんと共に、決意を固めたところで、一緒に食堂へと向かった。
ホテルのディナーのような豪華な食卓は、やっぱり家とは違った。
こんな生活を僕は毎日送れるのだろうか?と、不安にもなる。
でもやはり流石に弥生さんの食事は旨そうで、口の中にいっぱいの唾が溜まってきた。
「おっ?君たちも一緒に食べないのかね?」
和彦さんがメイドたちに声を掛ける。
「いえ…今日は皆さんいらっしゃっておりますし、私たちはご遠慮いたしますは…」
杏さんが控えめに答えた。