ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 507
「ふぅ…」
ため息をつく和彦さん。
ようやく落ち着けたか、優しい顔になった。
「あまり気にしないで、匠くんも普段どおりでいてくれよ」
「はい…なるべく、頑張ります」
「ところで、今日はどうするのかな?今夕食の準備中で、泊まっていくとか考えているかな?」
「あ、いえ…そこまでは…」
「なに遠慮はいらないさ…明日も休みだろ?…」
「あ、はい…」
「それなら大風呂にでも入って、ゆっくりしていくといい…」
正直、親父とお袋にどんな顔をしたらいいか分からなかった。
「それなら、お言葉に甘えちゃおうかな…」
「ああ、構わないさ、こっちとしても嬉しいからね。香澄もいるだろう?」
「ええ、まあ」
香澄は弥生さんやメイドのみんなと一緒に夕食作りのお手伝いをしている。
「人数が多い方が私も嬉しいよ、最近は寂しかったからね…」
「これからは嫌でも騒がしくなりますよ…」
「ん?…ということは?…」
「はい。香澄とも相談して、子供が産まれたらこちらでお世話になろうかと…」
「そ、そうか!……」
余程嬉しかったのか、和彦さんは瞳を赤く染めた。
「良かった。本当に良かった…ありがとう、匠くん」
「いえ、僕も、いろいろ考えたんですよ。香澄も、そうしたいと言っていましたから」
「嬉しいよ、君たちのために部屋を用意しておかないとな。生まれてくる子供のためにもね」
和彦さんは本当に嬉しそうだった。