ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 478
その夜なかなか寝付くことができなかった…
考えると考える程、頭は混乱した…
もしも僕と似た男が僕と双子の兄弟だとしたならば…お袋はその子を手放したということなのか?…
その逆も考えられる…
誰か別の女性が産んだ双子の片割れの僕を、親父とお袋に引き取ったことになる…
そういえば、香澄みたいに腹の大きくなったお袋の写真を、僕は見たことが無かった。
三枝さんが言うもう一人の僕のような存在…その鍵を握るのは間違いなく、鈴田美恵子だろう…
彼女は、高校生のとき、お袋、そして和彦さんとどんな関係だったのだろう。
踏み入ったら後悔するのだろうか、でも知らないわけにはいかない。
隣では香澄が気持ちよさそうに寝息を立てていた…
翌日、会社のPCで鈴田美恵子を検索する…
Wikipediaには彼女の細かい経歴が載っていた…
高校を卒業して暫くしてから、アメリカへ留学…
大学院を卒業すると直ぐに、スズタコーポレーションのロンドン支社に赴任…
その後.30代の若さで社長に就任…か…
…この経歴は、和彦さんと被るところがある。
和彦さんも高校卒業後アメリカに留学し、大学卒業後に帰国している。
まさか、向こうでもこの2人が関係していたのだろうか。
偶然の一致とは考えにくかった。
「どうしました匠さん?なんかすごく難しい顔されてますけど」
デスクに座る僕のところに、葉月ちゃんがやってきた。
「実は鈴田美恵子のこと調べてんだよね…」
葉月ちゃんには正直に話したかった。
「ああ聞きましたよ、昨日のことぉ〜…だからですか?」
「仕事とは別なんだけどさ…ところで葉月ちゃんはスズタコーポレーションの次期社長になる男のこと知ってる?…」