ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 476
でもその素材の良さはこうしていてもよく分かった。
真面目な髪型や眼鏡を外したら、この子はきっとお袋に対抗する程の存在になっていた筈だ…
集合写真の中には、若かりし日の親父の姿も写っていた。
なかなかのイケメンだ…
ん?…親父は鈴田美恵子のことを覚えているのだろうか?…
確か、教え子の名前と顔は忘れないって自慢してたくらいの親父だからな…
卒業アルバムを閉じ、もとあった場所に入れなおす。
聞きたいことは、山ほどあった。
リビングに戻ると、ちょうど風呂から上がったばかりの親父がいた。
「おう、匠、どうしたんだ?」
「ん?…まあ、ちょっとね」
このことに何かしらの秘密があるとしたら、親父も当然知っていることだよな?…
それなら、頑なに黙ってきた親父に、それを今聞くのは酷過ぎるか?…
「どうした?…冴えない顔してるぞ…」
「あ、いや…仕事でいろいろあっただけさ…」
僕は親父の顔を見ずに2階へ上がる…
今日あったこと、今親父に聞くのはちょっと躊躇いがあった。
もちろんお袋にも。
次の休みの日、青山家に行って、和彦さんか弥生さんに聞こう…
僕はそう思った。
自分の部屋。
ベッドの上で、香澄が本を読んでいる。
「香澄…」
僕はその身体を背後から抱きしめた…
「どうしたんです…匠さん?」
「悪い…ちょっとこうしていたいんだ…」
僕は抱く不安を気付かれないように、顔を隠した…
身重な香澄に…余計な心配を掛けたくなかったんだ…