ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 42
啓くんの話を聞いて、香澄ちゃんの箸が一瞬止まる。
…何か動揺することがあったかな?
しかし、兄妹でいいとこのお嬢様・お坊ちゃんと付き合うとは…似ているのかな…?
…と、玄関のあたりが何やらドタバタしだす。
「帰ってきたわね」
お袋がニヤリと微笑む。
そう、もう一人の妹・葵の帰宅である。
「匠兄ぃ~!!お帰りぃ~!」
顔を綻ばせながら入ってきた葵は、すっかりと大人の女性になっていた。
「葵…お前、随分と色気付きやがって、、」
「ヤダァ~匠兄ぃが彼女連れてくるんだから、私だってねぇ~」
…お互いお年頃ってことか…
「あっ!!香澄ちゃん~はじめましてぇ~長女の葵でぇすぅ!」
…なんでもう名前知ってんの?
…こういう情報の伝達だけは早いのね…
「こちらこそ初めまして!青山香澄ですぅ」
香澄ちゃんもぺこりと頭を下げる。
こういうところは本当に礼義正しくてお嬢様らしいなと思う。
「葵さんって、お仕事何されているんですか?」
「うん、幼稚園の先生なんだ!」
「へえー、私も子供大好きです〜」
和気あいあいと打ち解ける香澄ちゃん…
…友達が出来無いなんて、信じられません…
ん?…啓くん、香澄子ちゃんがいくらかわいいからって、そんな顔で見詰めてちゃダメでしょ…
「啓くん、香澄さんの顔ばっか見て…どうかしたの?」
…ほらな早速、梓の焼きもちが始まるよ…
「あ、ごめん…今『青山』って聞いたもんだから…」
「それがどうかしたのよ?」
「いや…僕が住ませてもらっているお屋敷の主も…『青山』っていうんで、つい見ちゃったんだ…」
「えっ、それって、啓くんは香澄ちゃんの家に…?」
「いや、まあ、僕も向こうのことはよくわかっていないので…」
香澄ちゃんもキョトンとしてこちらを見る。
「そうか、あのお屋敷は香澄ちゃん家のだったのか…」
親父が呟く。
「もう、単なる偶然じゃないの?今は食事中なんだから」
お袋は騒然となりつつある食卓を取り仕切る。