ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 396
「たっくみく〜ん♪」
…ドアの向こうから聞こえたノー天気な声が、今の僕にはとても安心できるものだった。
「お届けものだぞぅ」
「はい…ありがとうございます…」
…ああもう、自分が何と情けないことか。
旦那さんのものなんだろう…夏子さんが投げてくれたスウェットを素早く足に通す…
出来ればもっと早く…出来れば沙織ちゃんのパンツじゃなく、旦那さんのパンツを貸して欲しかったですけどね;…
「すいませんなんだか;…」
まあお礼は言っておかなくちゃだよね…
「遅くなってゴメン〜、何たって素っ裸で来たお客さんなんて初めてだなもんでぇ〜」
あ、;;…それを言われると返す言葉がありません;。。
ようやく服を着ることができて、これ以上ない安心感を得る。
…なんかおかしな話だけど。
「もうすぐ旦那が服持って帰ってくるからね。今日はこの部屋で寝て頂戴な」
「はあ…ここ誰の部屋です?」
「あ、私ですよ」
冬美ちゃん…って、なんですと?
「狭い家なんでゴメンね〜」
「いやいや僕一人で占領するなんて申し訳ないっすよ…僕は台所でも玄関でも何処でもいいですから…」
「そんなこと出来ないよ。大切な匠くんはお客さんなんだからさ。」
「そうですか…それじゃお言葉に甘えて…」
「冬美と一緒じゃ寝れないかもしれないけど、よろしくね。」
へぇ!?…
この部屋で寝るのって冬美ちゃんと一緒にですか?!…
「えへへ…よろしくお願いしますね、匠さん」
いたずらっぽく笑う冬美ちゃん。
…まさか、最初から狙ってやってました?
「い、いいんですかお母様!?」
「まあお母様だなんて…ふふふ、空いてる部屋もないし、冬美がいいって言うから…ね?」
…この母あってこその娘か?