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ほんの少しの勇気で人生って変わると思う
官能リレー小説 - 年下

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ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 388

「ああ、で、夏子、用事ってなんだっけ」
「ゆかりに合わせたい人がいる…って言ったでしょ」
「ああ…それ、本気だったのね」
さっきまでの笑顔が一転、真顔のゆかりさん。

「はい」
夏子さんが啓くんの腕を引き、ゆかりさんの前に出す。
「えっ、あの…」
啓くんはまだ状況を把握できていないようだ。

「あっ、この方が僕の上司である白鳥ゆかりさん…」
僕は慌てて啓くんにゆかりさんを紹介する。

そんな僕に対して啓くんは片頬を上げ、薄く微笑む…
「今更紹介なんてしないでいいですよ…」
凜とした眼差しでゆかりさんを見る姿は、僕が今まで知っている啓くんでは無かった…

そんな啓くんに対して、ゆかりさんは直視できずに俯く。

「ずっと探してたんです…会いたかったんです…」
啓くんは言う。

「ごめんなさい」
ゆかりさんが震える声で言った。
「…私、ずっと逃げてた。ずっと避けてた。そんな人間だよ…」
「でも、僕の母親は、あなたしかいないんです…」

やはり…啓くんは知っていたのか…
「いつから知っていたんだ?…その…、ゆかりさんが自分の母親だってことを…」
僕はゆっくりとした口調で啓くんに聞く…

「初めからですよ…ここに来るずっと前から…だからスカウトされるように何度も道を往復したりして…」
「け…啓…」
「遠くで見ているだけでよかったんです…元気な姿を見られるだけで…」

啓くんの言葉は、僕が思った以上に優しく、寛大だった。
今まで辛い思いをしてきただろうに、懐の広い男だ。

「啓…ごめん、なさい…っ」
対するゆかりさんは、肩を震わせ、啓くんの名前を呼ぶだけで精一杯だった。
「母さん…顔、見せてよ…」

鼻をすすり、しゃくり上げ…
「ゆかり…」
夏子さんがゆかりさんの肩にそっと手を置いた。

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