ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 387
「うぁ浅野さん、何か驕ってくれるんですかぁ?〜」
高校生らしく.はしゃいで見せた啓くんは、皆の前でもお構い無しに、新商品のパンツをスルッと下ろす…
まあ、あんな薄地の小っこい布っきれだから、中身は見られているも同然なんだろうけどね;…
「そうね…それじゃ何か食べさせて上げるから、早くソノ可愛いの、しまって頂戴よぉ!」
夏子さんは、脱いだ制服のズボンの中に丸まっていたパンツを、啓くんに向けポイっと投げた…
啓くんは嬉しそうにしながら服を着る。
「なんか、悪いですね」
夏子さんに近づき、軽く頭を下げる。
「いいのよ。それで2人の関係が修復できればね」
夏子さんはニコッと微笑んだ。
準備が整った啓くんを連れ、ゆかりさんがいる別室へ向かう。
「あ、白鳥さんも誘うんですね!嬉しいなぁ〜、僕あの人とゆっくり話ししたかったんですよね…」
意味深な事を言う啓くん…
もしかして啓くん…ゆかりさんが自分の母親だって知ってんのか?…
いやいや天然な啓くんに限ってそんなことは無いだろう…
知っていたら、こんな所でバイトなんかしないだろうしな…
「啓くんがそう言わなくても、ゆっくりお話はするつもりよ」
夏子さんは振り向かずに言った。
…ゆかりさんは、ようやく啓くんに会う気になったのだろうか?
僕にはまだ何もわからない。
「こっちね」
ゆかりさんがいる部屋の前へ。
夏子さんがコンコン、とドアをノックする。
「ゆかり、入るよー?」
「いいよー」
中からゆかりさんの声。
普段と変わらない、明るい感じだ。
ニッコりと僕らに向ける微笑みも、いつもと変わらなかった。
まあ三流ドラマじゃないんだから、涙の再会ってことにはならないんだろうけど、どこか僕は拍子抜けしてしまう。
「あら匠くん、変な顔してどうしたの?」
デスクから立上がるゆかりさんは、満面の笑みを僕に送ってきた。
「あ、いえ;…そんな微笑みを見ると…顔が緩んでしまいますよ;…」
僕は顔を高揚させながら頭を掻いた。