ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 386
―別のある日、青山ホールディングス本社―
「匠さん、お疲れ様でスー♪」
外回りから戻ってきた僕を迎えるのは同じ部署の早川美玲ちゃん(25歳独身・彼氏アリ)
「ありがとう…啓くんはいるの?」
「はい、ちょうど新しい製品のモデルしてもらってましてぇ」
梓の彼氏、啓くんはウチの会社製品のモデルをしている。
啓くんを呼んだ目的は、彼の生みの母であり、僕の直属の上司である白鳥ゆかりさん(営業部部長)に会わせる為だ…
奥の部屋を開けると、ほぼ素っ裸の啓くんが、檜山美月さん(27歳独身・彼氏アリ)とデザイナーの安室沙織ちゃん(24歳独身・彼氏アリ)の前に立たされていた。
「あ、お兄さん;…」
身を捩り、陰部を隠す啓くん…
一緒に風呂に入る仲とはいえ、こういう状況ではやっぱり恥ずかしいのも無理は無いよね。
「あ〜ん駄目ぇ〜動かないぃ〜」
沙織ちゃん、君には武士の情けってもんは無いのかよ;…
「あ、柏原さん、これ、どうですぅ?」
美月さんにそんなことを聞かれる。
「…なんかすごいね」
「もうちょっと中身のあるコメントしてくださいよー」
沙織ちゃんが不満そうに言う。
…いや、ホント、いきなりこれを見せられて、何を言えばいいのか。
「まだ新人くんなんだから、匠くんをそんな虐めないで上げてよね」
「な、夏子さぁん〜」
僕を助けるように部屋に入ってきたのは、浅野夏子さん(年齢不詳・既婚・彼氏アリ?)。
入社依頼、夏子さんは何かと僕の面倒をみてくれていた。
「ダメですよぉ夏子さんは匠さんに甘いんだからぁ〜、新人だからって新作の感想ぐらいは瞬時に出なくっちゃあ〜」
沙織ちゃん;…可愛い顔して、言うことは結構手厳しいんですね;…
「沙織ちゃんはシビアねぇ」
夏子さんがそう言って苦笑いする。
「…ところで、今やってる作業、いつ終わる?」
「一通りやったので大丈夫ですよ」
夏子さんに、美月さんが言う。
「じゃ、啓くん、服着て、匠くんと一緒に」
「あ、はい…」
つい先日、夏子さんにはゆかりさんと啓くんの関係について話をしていたのだ。