ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 363
少なからずとも、罪悪感がその言葉に救われる…
ありがとう…アンナさん…
キスを交わしながら、湯槽の中で微睡む…
水と油のように、溶けることなのない幾つもの白い液玉が海月のように漂っていく…
「懐かしいです…」
アンナさんはそれを両手ですくい取り、愛おしいそうに眺めていた。
「匠さん…また、こうしてくれますか?」
「もちろん…アンナさんが望むなら…」
「はい…ありがとうございます」
2人で浴室を出る。
「ずいぶん長いお風呂でしたね〜」
なんて遥さんにからかわれたけど、アンナさんと笑って済ませた。
遥さんも知っているのだろう、深くは追求しなかった。
そのまま遥さんの家に泊まり、帰宅したのは翌朝のことだった。
「おっとぉ〜お兄さん帰りっすか?…」
玄関で啓くんと出くわす…
君…もう家に下宿でもしたほうがいいんじゃないか?…
「夕べは昔の友達と会ってな…そいつん家に泊めてもらったんだ…」
これって、ウソはついていないよな;…
「そうでしたか」
啓くんは何も知らないからいいか。
「おっ、匠兄ぃったら朝帰り〜!」
続いて出てきた梓が茶化してくる。
「お前なぁ…」
…朝帰りったって、今回は酒は一滴も飲んでないからな。
2人は学校に向かう。
それと入れ替わりで家の中へ。
「昔の友達って…宏くん?」
啓くんとの会話を聞いていたんだろう…味噌汁とともにお袋が言った。
「いや、アイツとはまだ会ってない…」
僕はテーブルに着き、味噌汁を啜る。
「宏くん…去年事故に合ったのよ…」
宏はこの家にもよく遊びに来てたから、お袋が知っているのは当然か…
「ああ聞いたよ、近いうちに会おうとは思っているさ…」
ウソだった…出来ることなら、このまま会わずにいたかった…
「でも何とも無くてよかったはぁ〜。外人の奥さんに、お子さんもまだ小さいだもんね…」
流石に、男性機能を損傷しちまったことまでは、知らないんだな…