ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 339
今から行けばまだ定時には間に合うよな…
遥さんには世話になったお礼もしなくちゃいけないし…
すぐさま返信を打ち、伊藤さんに貰ったスーツに着替える。
あのパンツを入れた袋が目に入り、一瞬迷うが、流石に今回はそんなことも無いだろと…そのままズボンを引き上げた。
会社に着く。
「別に明日でよかったんだよ」
遥さんはクスッと笑った。
「いや、なるべく早いほうがいいと思って…暇でしたし」
「ふふっ、匠くんらしいや」
入り口から少し歩いたロビーで遥さんと向き合い、話をはじめる。
契約書や諸々の要項に目を通し、印鑑を押す。
手続き自体は数分あれば終わることだ。
「せっかくここまで来てくれたし、カフェにでも行く?」
「いいんですか?もう定時になりますよ…」
「何言ってるのぉ。今宵は匠くんの為に総べての予定をキャンセルしたんだから…」
あ、やっぱりそうきましたか;…
「僕も遥さんにはお礼しなくちゃいけないと思っていたんです。」
「そんなこと気にする必要ないよぉぉ。匠くんは自分の実力で勝ち取ったんだからさぁ。」
実力って言われても…;
恥ずかしいあの写真だけの気もしますけどね;…
連れて行かれた場所は社内のカフェテラス。
オフィスの中にこういうところがあるというのは、さすが大企業だ。
勤務時間中ということもあって人はまばら。
「適当に好きなもの頼んでいいから」
「は、はあ…」
「ちゃんとしたコックさんが厨房に入っているから、ファミレスなんて目じゃないよぉ。」
流石、和彦さんの会社だけのことはある…
あの人、弥生さんの料理に惚れ込んで、西欧から青山家に連れて来ちゃったんだもんな…
「それじゃここで、夕飯済ましてしまおうかな…」
「それなら精力がつきそうなもの食べなくちゃだねぇ!」