ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 322
「そうですか?ありがとうございます、ならお言葉に甘えさせていただきます〜」
「うん、ゆっくりしていってよ」
「じゃあ、私たちは失礼しますね」
「またお屋敷でお会いしましょう〜」
舞ちゃんとソフィアちゃんは部屋から出て行く。
僕は玄関まで見送った。
リビングに戻り萌ちゃんと対面しながらお茶を飲む。
「なんだか2人っきりだと、照れるよな…」
萌ちゃんとは何人かのメイドたちといつも一緒だったので、こうして2人っきりになるのは始めてだった。
「私も男の人と2人で話すなんて、何年かぶりぃですぅ。。」
目を合わさないように俯く萌ちゃんは、無垢な少女そのものだった。
「萌ちゃんは、兄弟とかいたのかい?」
「はい、3人。女は私だけで」
「だったら、そんな緊張することないんじゃ」
「…もう、会えないので」
「えっ?」
「私の父は、町工場で小さな工場を経営していました。それが、不況のせいで倒産して、借金も膨らんで…家族バラバラになってしまったんです…」
青山家のメイドの中には、不幸な生い立ちの子も何人かいるって、杏さんが言っていたもんな…
「それで兄さんたちには会えていないの?」
「はいお兄ちゃん…容姿がいいのが災いして、身体を売る仕事を強いられているんです…」
え?…男でありながら身体を売る仕事だなんて……
男性用下着を売ることに躊躇していた自分が恥ずかしくもなる…
「…まあ、他人から聞いた噂なので、信憑性がいかほどかはわかりませんが」
「うん、辛いこと思い出させてごめんね」
「いえ、匠さんですから」
萌ちゃんはそう言って笑顔を見せてくれた。
強い子だな。
「でも、萌ちゃんはどうやって青山家に雇われたの?」