ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 276
「ま、そうだろうね…今頃はきっと、夕食の準備中だね」
「そうですね」
2人で笑いながら話し、啓くんが離れのドアを開ける。
「どうぞ」
「悪いね」
中に入った瞬間…
「啓お兄ちゃんお帰り〜、あ、匠さんもいる〜」
…つ、椿ちゃん…
そうか、椿ちゃんは夕飯の準備の忙しさには関係ないもんね。
「どうしたんです?そんな泥だらけになっちゃってぇ」
ジャンクフードの袋を抱えながら、怪訝な表情を浮かべる椿ちゃん…
「近道で来たら、こんなになっちまったよぉ;」
啓くんは椿ちゃんの前でありながら、徐に着ていたシャツを脱いだ。
「ああ、しまった…」
僕も着ていたスーツを確認するが、啓くんほど汚れてはいなかった。
「匠さんもお仕事だったんだぁ」
「うん、そうだよ」
椿ちゃんにスーツ姿を見せるのは初めてだよな。
「お兄さん、シャワー浴びます?」
「僕は別にいいけど…」
…というか啓くん、椿ちゃんの前で裸になって…
こんな風にブラブラさせている、それに動じない椿ちゃんもどうかと思うけど…;
やっぱり帰国子女ってどこか違うんですかね?…
「匠さんも一緒に浴びて来て下さいよ。その間に洗えるもんは洗っておきますから。」
椿ちゃん、若いのに気が効くんですね…
「そうか、ありがとう、椿ちゃん」
まだ年齢的には小学生だけど、あの弥生さんの娘だ、きっとしっかり者に違いない。
着替えはないけど、汗かいたし、シャワーは浴びたいね。
「すぐ終わりますから、お兄さん、準備しててください」
「うん」
啓くんが素っ裸で浴室に入っていく。