ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 231
「会社の人なんですか?…」
僕も遥さんに追いつくようにして、ジョッキを空けた。
「すいません~~~!生二つお代わり〜!」
だから遥さん、ベルボタンがあるって言ったでしょ…
「あれ?柏原くん、何質問されたんだっけ??」
「もぉ〜いいですよぉぉ…」
…蒸し返すのも悪いよね。
今は、ビールを幸せそうに飲む遥さんを見ていよう。
「ねえ、東京での暮らしはどうだったの?」
「うーん、便利といえば便利ですし、1人って気楽な面もあるけど、こっちに戻ると、もう行かないでいいかなって思います」
「そうなのぉ?東京の暮らしって憧れるけどな…」
「始めは僕もそうでした。まあ僕の場合、東京でっていうより"1人暮らし"に憧れてたんですけど…」
「柏原くんのお家、女兄妹ばかりだもんね…」
「はい…お袋いれると女ばかり4人もいて…なかなか自由にできなくて…」
「やだぁ、それって"1人H"のこと言っているのぉ?」
「どうしてそういう話に持ってくるんですか」
「宏は私がいても平気だったのか、部屋からたくさん出てきたよ」
宏…あいつは無頓着だったからな…
「まあ、それもありましたけどね」
「東京って可愛い女の子いっぱいいるんじゃない?それこそナンパとか合コン三昧だったんじゃないの?」
…痛いところ突いてきますね…
「まあそんな時代もありましたけど、可愛い女がいっぱいいるのと同じぐらいに、イケメンもいっぱいいる訳で…;」
「そっかぁ…名古屋のイケメンくんも東京では"ただの人"ってことかぁ〜」
僕のジョッキにカチンとぶつけ、遥さんはゴクゴクと喉を鳴らす。
「…僕なんてこっちでもイケメンではありませんってぇ…」
遥さんに吊られ、僕もジョッキを傾ける。
「そんなこと無いよぉ。今日だって"うちの社長に似たあの男は誰だ?"って噂になっていたはよ。」