ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 229
この透明感のある魅力的な笑顔を…僕は歪めさせんだと思う…
眉間に皺を寄せ、奥歯をくいしばって苦痛に耐えている遥さんの表情が、断片的に甦る…
「さぁ乾杯しよぉ」
遥さんに促され、僕は大ジョッキを慌てて掲げた。
「それでは〜、久しぶりの再会を祝して乾杯〜」
「かんぱーい」
互いのジョッキを突き合わす。
遥さんは豪快にグイッとビールを飲む。
「ふふ、あの頃と変わんないなぁ」
「…お酒は弱いんですって」
「うふふ、柏原くんって、やっぱり昔と一緒だ」
遥さんはそう言いながら、僕の上唇に着いたビールの泡を指で拭った…
「で、でも…あの頃よりかは…少しは強くはなったと思いますよ…」
唇を触れられただけで、ドキドキした…
動揺を知られたくなくて、ビールで喉を鳴らす…
「あの頃って…私とやった時のこと?…」
「えっ、あぅ、い、いや…」
直球で聞いてくる遥さんに、返す答えがない。
思えば、あれこそ酔っ払った勢いで、無理やり遥さんを襲ったのかもしれない。
今考えると非常に申し訳ないことだ。
「素直に言ってくれればいいよ…私、あれが初めてだった…すごく痛かったけど、相手が柏原くんだったから、いい思い出になってるんだ…」
「そう言ってもらえると…嬉しいです…」
遥さんに再会するまで、あの夜のことをすっかり忘れていた自分が申し訳なくなる…
「柏原くんは慣れてたよね?…凄く上手だったもの…」
「え、…そうでした?…そんなことも無いと思うけど…;」
確かに遥さんは2人目の女性だったけど、弥生さんとの回数は相当なものだったからな…