ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 228
店の奥の二人席に座る。
「柏原くんは煙草吸わないのね」
「ええ」
もともと吸わないし、相手が遥さんなので、禁煙席の方が良いと思い、この奥の席を選んだ。
「ビールでいいよね?」
…今夜はとことん飲むつもりですか?
「あんまり強くはないんですよ…」
ここで一応断っておく…
粗相があるといけないからね;…
「ふふふ…変わってないんだ…私とやった時も…相当酔っていたもんね…」
「あ、いえ…あの時は、確かに…」
しどろもどろになってしまう…
…それこそあのときは酔っ払って記憶が曖昧だった。
遥さんはしっかり覚えているんですね…
「でも、嬉しいな。また柏原くんと会うことができて」
「僕もです。まさか面接で…」
「おかげで面接にならなかったね。ごめんね〜」
「気にしないでくださいって!…今日は遥さんと再会できたことが、僕にとっては収穫と言っていいですからぁ」
「嬉しいこと言ってくれぇるな〜それなら再会を祝して乾杯しましょ!〜すみませぇ〜ん!!ビール2つぅ〜!」
奥の席はどこからも死角になっている為に、大声を発しなければ気づかれることはなかった…
「遥さん、そこに呼び出しベルあります…」
「あー、あら…でも、こういう店って大声で店員さん呼ぶほうがらしくない?」
「まあ…確かに」
こんなに豪快な人だったかな、遥さんって。
どうやら通じたのか、店員がビールを2つ持ってやってきた。
「さあ、飲むわよ〜」
ニコニコと笑う遥さんに、あの頃の記憶を重ねる。