ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 227
3杯目のコーヒーを飲みながら、僕は時間を持て余す。
手持ちぶたさに辺りを見回すと、制服を着た高校生カップルたちが、展望エレベータを待っているのが見える。
僕もあのぐらいの時、スカイバルコーニーで弥生さんと夜景を見ながらキスをした…
そんな懐かしい光景が甦る。
あの頃は、本当に何も深いことを考えることもなく、それでも幸せな時間を過ごしていたと思う。
それは、ずっと永遠に続くものだと…
それからもう少しして、遥さんからメールが来た。
『今終わった!すぐにそっちに向かうからね〜』
その内容を見て、少しにやけてしまう自分がいた。
指定された居酒屋へ行く途中、薬局に立ち寄り栄養ドリンクを物色する。
こんなもの気休めにしかならないのは分かっていたが、飲む前に飲むのが習慣になっていた。
「滋養強壮のドリンク剤をお探しですか?」
頭の薄い中年の店員に声を掛けられる。
「あ、はい…まあ…」
曖昧に応えたのがいけなかったのか、気を回し過ぎの店員の勧めで強精ドリンクを購入することとなる…
まあ、それでも飲まないよりは少しはましと思え、僕はニヤつく店員の前で、それを一気に飲み干した。
薬局を出て待ち合わせ場所の居酒屋へ。
「お店の前で待ってて」という遥さんのメールに従い、店の前でしばし待つことに。
その間にサラリーマンと思しきスーツ姿の人が集団だったり、一人だったり、店に入っていく。
「お待たせ!」
面接のときと同じ格好で遥さんがやってきた。
その身体に張り付くようにフィットした細身のスーツは、やけに身体の線が強調され、殊更エロく見える…
街行く男たちが何気を装い振り返るのも、確かに納得はできた…
「今日はお疲れ様ぁぁ〜さぁ入りましょう!」
腕を絡ませてくる遥さんに、ドキリとしてしまう…