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ほんの少しの勇気で人生って変わると思う
官能リレー小説 - 年下

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ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 220

「ああ、変に感じるのは最初だけですよ。いずれ慣れます」
「うーん、ホントに?」
「ええ」
ニッコリ笑顔の啓くんに、それ以上何も言えない。

朝食を済ませ、まだ時間があるので履歴書を書く。
実に久しぶりのことだ。
その間に親父と妹たちはそれぞれ仕事、学校に行くため家を出て行く。

「何時からなの?」
「10時半。ここからだと時間掛かるから、これが出来たら出かけるよ」
「そうね、知らない場所だし、こっちは東京みたいに頻繁に電車もバスも来ないものね。」

この土地から出たことのないお袋が、僕の大学時代に始めて訪れた東京で一番驚いていたのは、分刻みのその交通網の多さだった。

それもそのはず、2分や3分で電車が行き来し、ターミナル駅ともなればJR・私鉄・地下鉄と数多の乗換えがあるのもザラ。
「東京に着いた」と連絡があってからお袋が一人暮らしの僕の家にたどり着いたのは数時間後…なんてこともあった。

都会の暮らしも悪くはなかったけど、どうも生き急いでる感があったかもしれない。
まずは結果がどう出るかはわからないが、地元で働くのもいい選択だったのかもしれなかった。

もし今回のことが上手くはいかなかったとしても、もう東京での生活はいいやと思ってしまう。
例えそれが名古屋市内のオフィス街であったとしても、東京よりはマシな気もした。

「さぁ、行くとするかぁ!」
僕はYシャツ1枚の恰好で、その場から立ち上がった。

履歴書はカバンの中へ。
スーツも羽織ってカバンも持って、いざ出陣…は大げさか。

「頑張ってね」
お袋が玄関で靴をはく僕の両肩をポンポンと叩く。
「ああ」
一言かけて、僕は家を出る。

「暑っ」
…スーツは要らなかったか?

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