ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 218
「ダメでした?でもお母さんや妹さんたちがついてくるよりはいいじゃないですか」
「僕を1人にするって考えはなかったのか…」
「それより、早く着替えた方が良いと思いますよ」
全く…
少々の不満はありつつもパンツをはきかえ、親父のスーツを借りに戻る。
「やだぁお兄ちゃん、またそんな恰好でウロウロしてぇ〜」
栞…結構君って、手厳しい人だったんですね;…
「ああ似合ってる似合ってる、10際若返ったって感じね」
葵…そんなに前のってイケてなかったんでしょうか?
「でもちょっと目立ち過ぎてて…Hな感じぃ〜」
梓…僕だって恥ずかしいんだから、それを言うなよぉ;
「面接には不向きな感じね。絶対遊んでる子だって思われるはよ…」
お袋…だからこれを見せることなんてありませんから;
それはいいとして。
「スーツはどこに?」
「ああ、いくつかあるけど…」
お袋がそう言ってクローゼットを開ける。
「黒のスーツがあったかしらねぇ」
「結構前に買ったやつだけど、そんなに着てはいないから大丈夫だろう」
親父、まだ少し気落ちしてないか?
久しぶりにスーツに腕を通す…
普段緩い格好しかしないせいか、どこか緊張し背筋が自然と伸びる。
「なかないいんじゃないか?」
「ホント、サイズも調度いいし、匠の為に誂えたみたいじゃない?」
「孫にも衣装ってこのことよね。」
「お兄さん、普段からスーツだけ着てれば、女の子にもモテルんじゃないですかぁ?」
「面接官が女だったら、絶対セクハラされぇちゃうぅ〜」
「パンツをプレゼントした甲斐があるってもんよねぇ」
ここぞとばかりに言いたい放題かお前ら。
お袋はともかくとして、妹3人は10年前ならそれぞれ1発ずつ殴っていただろう。
もしあのころ啓くんみたいなのがいたらそれどころじゃ済まねえ。
…というのはあくまで冗談。
「ありがとう、親父。これ借りるよ」
「おう、頑張ってこいよ」