PiPi's World 投稿小説

ほんの少しの勇気で人生って変わると思う
官能リレー小説 - 年下

の最初へ
 204
 206
の最後へ

ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 206

…ノリが軽いね君は。
梓が聞いていたらどうなってるだろう。

「そんな軽いノリではいけないでしょ。何がしたいとか、将来どうするとか、僕が言えた話ではないけど」
「まあ、そうですね…」
「梓も東京に行くって言ったらどうするか…逆に行きたくないといわれたら?」
「うーん…」

啓くんは自身の皮を弄りながら、唸るような低い声を上げる。

僕はぼんやりとそんな啓くんを眺めながら、自分だったら"あの時"…弥生さんとの別れが事前に来てはいなかったら、どうしていただろう?…と考えてしまう。
将来を長い目で見ることなどできない"青春真只中"だった自分は、きっと東京よりも弥生さんを選んでいたことは間違いなかった。

確かに東京には可愛い女の子がたくさんいた…でも、弥生さんのように魅力的で心から愛したくなる人はいなかった。
「お前は高望みし過ぎなんだよ」
大学時代の悪友がそんなことを言っていた。

…本当にそうだったのだろうか。
啓くんには、僕のようにはなってほしくはない…

たった2、3日しか過ぎてはいなのに、僕の中で啓くんは、すっかり弟のような可愛い存在になっていた。

啓くんからしてみたら、そんなのいい迷惑かもしれないけど、自分の総べてを素直に曝け出せる啓くんが、羨ましくも感じていた…
まあ、その皮っ被りだけは、そんなに晒されてもこっちが恥ずかしくなるけどな…:;

自分を主張しながらも嫌味にならない、この居心地のいい空気は、やはり共通するものがあると思った…
人一倍悩みはあるだろうに、それを笑顔で隠す強がった意地らしさも、同じだと思った…

啓くんはやはり香澄ちゃんに…とても似ていた…

「ふぅ…あ、お兄さん、どうしました?」
「ん?いや、なんでもないさ」
身体を洗い終えた啓くんが、キョトンとしてこちらを見た。

『君、実は香澄ちゃんと血のつながりがあるかもしれんぞ』
なんて、言えるはずがない。
本当かどうかなんて確証はどこにもない。

僕は啓くんに「お先」と告げ、風呂場を後にした。

SNSでこの小説を紹介

年下の他のリレー小説

こちらから小説を探す