ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 204
啓くんの背中を見ながら考える。
きっと涼香さんは、啓くんに愛情を感じ、心に傷を抱えた啓くんに、その傷を癒すために手を差し伸べたのだろう。
身体の関係はその延長線上のはずだ。
涼香さんは、心優しい人だから…
「啓くんは、将来どうするつもりなんだい?」
「そうですね…まだ何も決めてませんね…」
本来なら、親父さんの後を継ぐのが筋なんだろうな…
「庭師には?…」
「あんまし興味ないっす…」
だろうな…いくら代々青山家につかえる庭師の家庭だとはいえ、そんなの時代錯誤だよね…
ああそういえば…時代が違っていたら、啓くんは僕の家臣だった訳か…
「父の仕事は確かに素晴らしいかもしれないけど、僕にそれができるかと考えると、ちょっと難しいかなと」
「まあ、そうだよな」
僕だって教師が出来たかと聞かれるとちょっと厳しいかもしれない。
「梓は卒業したら青山家で働くんだ、なんて言ってたらしいけど?」
「アレもどこまで本気かわからないんですよね」
「そうか…梓には似合っていそうなんだけどな…」
「はい…でも青山家で働くことになったら、僕のいろいろが知られちゃいそうで、怖いですよぉ…」
ああ…君には梓に知られちゃいけないことがいっぱいあるもんね…
「青山家のメイドさんって皆住み込みなんだろう?」
「はい。シフトはあるみたいですけれど、朝早くから夜遅くまで働いてますからね…」
お嬢様である香澄ちゃんの身辺の世話等、その役割は重要かつ重労働ではなかろうか。
いくらシフトが存在するといっても朝から晩まで。
所謂「ブラック企業」よりも過酷なイメージも沸くが、桜ちゃんを筆頭に舞ちゃん、雪ちゃん、純ちゃん、萌ちゃん、ソフィアちゃん…みんな笑顔で、楽しそうだ。
涼香さんも、彼女たちを信頼しているのがよく分かる。
「…お前、雪ちゃんとやったのか?」
「えっ!?お兄さん、それどこで…」