ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 190
「へ…そうなの?」
「うん…涼香さんって、ほら、モデルとかやってて、男性関係が派手で…」
「お袋、涼香さんと会ったことあるの?」
「ほんの少し、だけどね」
「じゃあ、香澄ちゃんのお父さんは誰なんだ?」
「ごめん、それはわからないの」
「それなら和彦さんは、そうとは知らずに自分が香澄ちゃんの父親だと信じているのかな?…」
「多分…涼香さんはそのことを随分気にしていらしたは…」
自分の息子の存在も知らず…
自分の子だと信じて育てている娘が、他人の子とは…
和彦さんはもとより、そういった中での“男”の非力さを感じてしまう…
「…そんな中で、香澄ちゃんと付き合うなんて出来るかな…」
「形の上では兄妹だけど、血のつながりはないから…後は匠と、香澄ちゃんの思いようよ」
…僕と、香澄ちゃんのね
ずっと考えていても仕方ない。
「私も、青山くんに会って話さないといけないかな」
「お袋がその気なら…」
「それでも…涼香さんに聞いたことは言えないと思うは…」
「だろうね…それは和彦さんにとっても、香澄ちゃんにとっても…余りに酷なことだよな…」
「だから、匠が息子だと知ったら、あなたたちの交際は当然反対されるだろうと思うのよ…」
そう、だよな…
ましてや青山家にとって僕は香澄ちゃんの婚約者という扱いだし…
本当のことだとしても余計なことを言うとそれこそ締め出しだ。
…もう少し、黙っておくことも必要なのかな
―ところで
「お袋…杏さん…黒岩杏さんって、知ってるよね?」