ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 167
―自分が思いを寄せていた人がやっていたこと―
…あぁ、その一樹さんとやらってのは…そういうことか…
「匠さん」
「うん?」
「責任、取ってくださいね?」
「ん?あぁ…僕でよければ?」
「ふふふ…」
―少々時間はかかってしまったものの、香澄ちゃんが作った豪勢な朝食を、二人で平らげたのだった。
食器を二人で洗う姿は、まるで新婚さんみたいだと、僕は少し照れた…
もしもこの家に僕が婿に入ったとしたら、食器洗いなどすることは永遠に無いだろうけど、それでも香澄ちゃんとたまにはこうして、二人で何かをしたいと思った…
食器を洗い終え、再び椅子に座る。
「では、行きましょうか」
「行くってどこへ?」
「みんなが集まるお部屋にですよ〜」
あぁ、そういうことか。
―長い廊下を香澄ちゃんと並んで歩く。
「みんなが集まる場所なんてあるの?」
「リビングみたいな感じですね。普段みんなでくつろいで遊んだり、テレビ見たりするんですよ」
…何か共同生活の学生寮みたいだな。
僕は寮なんて使って暮らしたことないからいまいちよくわからないけど。
香澄ちゃんに連れられその部屋まで行くと
「広いねー…」
リビング、とは言うものの、やはり一般家庭とは大きく異なるわけで。
奥のテーブル、両側の椅子に座るのはメイドのソフィアちゃんと萌ちゃん。
2人とも仕事はお休みなのだろうか、私服姿だった。
「ソフィア、萌ちゃん、おはよう!」
「おはようございますお嬢様、匠さん」
笑顔で挨拶するのはソフィアちゃん。横の萌ちゃんは軽く会釈するが、すぐに険しい顔になる。
何をやっているのかとテーブルの上を見ると、どうやら将棋の対局中だったらしい。
…ソフィアちゃん、チェスじゃないんですね。
「皆も朝のお仕事が終わったら、休憩にここに集まってくるんでぇす。」
へぇ〜…さすが青山家、従業員の休む部屋もサロンみたいじゃないかよ…
「あ、香澄ちゃんはこれからは?」
「私は先生がみえるから、そうはゆっくりはしていられないんでぇすぅ」
「あ、家庭教師の?」
「はい。今日は保健体育の講議なんで、楽しみではあるんでぇすけどね」