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ほんの少しの勇気で人生って変わると思う
官能リレー小説 - 年下

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ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 143

うーん…
話を聞けば聞くほど複雑すぎて収拾がつかなくなる。
僕は、とんでもなく厄介なことに巻き込まれているのではないかと…

「匠さん」
香澄ちゃんが言った。
「…いろいろありますけど、私は、お父様も、お母様も大好きです。もちろん、匠さんも、桜ちゃんも、みんな…」
「うん、わかってる。ありがとう」

そんなこんなで香澄ちゃんの部屋を出た僕は、外の風に当りたくて庭に出る…
上空にはまん丸い月が、綺麗に手入れされた木々を照らしていた。
薄茶色の煉瓦が敷かれた小道を行くと、家の灯りが遠くに見えた。
…啓くんの家か…
啓くんは今日も僕の家に泊まっているんだろうか?…

いろいろ啓くんの話しを聞いたとはいえ、今の僕は難しいことは考えずに、啓くんと馬鹿っ話しでもしたかった…

「…はあ」
こんな溜息が出たのは香澄ちゃんと初めて出会ったあの日以来だ。
ただ、その理由は大きく異なるけども。

澄んだ夜空に、丸い月、輝く星。
しかし、今の僕の気持ちは、この空には程遠い。

「…匠さん、どうかされました?」
後ろから声がした。
一度聞けば誰かわかるハスキーボイス。
「…杏さん」
…例の一連の問題は一切知らないであろう、後継執事の杏さんだった。

「あ、いえ…月が綺麗なもんで、つい見惚れていました…」
「本当ね。こんなに綺麗な満月、久しぶりですもんね…」
「あ、満月だったですかぁ…?」
「まあぁ匠さん、知らずに見ていらしたんですか〜?満月ですよ。ほら、まん丸でしょ?…満月の夜って女の血は騒ぐって…知ってます?」

…怖いこと言わんでください。
さっきまでそれに近いことを聞いていたんで余計に身にこたえる気がしますよ。
…狼男じゃあるまいし。

「冗談ですよ」
「いえ、冗談に聞こえませんよ」
「ふふ…緊張は解けました?」
「うーん…わかりませんね」

しばらく2人でお屋敷の敷地を歩く。
「杏さんはどうされたんです?」
「今日の仕事は終わったんで…一息つこうかと。今から一緒にお茶します?」

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