ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 1167
「私でもダメかなぁ?」
お袋が栞に代わって樹を抱きかかえる。
それでも泣き止まない。
「アンタらがこうだったのももう何十年も前だったからねぇ…」
お袋は苦笑する。
栞は代わりに香のお相手をする。
こちらは逆に大喜びではしゃいでいる。
同じ顔形をしていてもここまで違うとにちょっと驚く…
まあ一卵性の双子といっても別人格を持った個々の人間なんだから、それぞれに個性があって当たり前か…
「そういえば車が無かったけど、親父は梓の病院にでも行ってるの?…」
「ついでだと思うけど、立ち寄ってるんじゃない?」
「どこに行くかは…」
「わかんない。すぐに帰ってくると思うけど…」
まあせっかく孫が会いに来るんだもんね。
それにしてはタイミングが悪いな。
「まあみんな座ってくつろいで、お茶を入れるから…」
葵と栞それに恭介を対にする形で、僕や香澄それに弥生さんと椿ちゃんが、座敷に設けられたテーブルの前に座る…
「なんだかお正月みたいね…」
「ああ…昔は正月になるとこうやって、親戚やら知り合いが皆で集まったもんだよな…」
歳をとるごとにその親戚関係はやってこなくなり関係も希薄になっていく。
今では正月は家族で静かに迎えるようになった。
その家族とも徐々に関係が薄れていくかもしれない…
「お父さんと梓も一緒がよかったな」
「まあ、仕方ないだろ」
「早く葵と栞もいい人見つけてきてよ」