ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 1168
「そうね、まさか梓に先を越されるとは思ってもいなかったはぁよ…」
「あっ;何かすみません;…」
「別に恭介くんが謝る必要なんて無いはぁ、お父さんとお母さんみたいに、ずっと仲良しでいればいいのよ」
栞と恭介くんのことを知っているだけあって、栞の言葉はなんだか重く感じるよな…
そんな重い事実があっても、この空間はすべてを優しく浄化してくれる雰囲気があった。
それもこれも、僕らを育ててくれた親父とお袋の力があってこそ。
それが、全くの他人である香澄や恭介にも及んでいるのは当然かもしれない。
「椿ちゃんにぴったりの服があるんだけど、どうかしら」
お袋が弥生さんに言い出す。
「お母さん、私たちのおさがりだったらちょっと…」
「そんなこと無いはよ…お下がりだろうと何だろうと戴けるなら嬉しいはぁ」
弥生さんとその横の椿ちゃんはニッコリと笑う。
「ほらぁ…、よかったら2階で見てくれない?可愛い服が箪笥のコヤシになっているのよ…」
ある意味強引に弥生さんと椿ちゃんを2階に連れて行くお袋…
「それじゃあ私もお手伝いしますね…」
それに続き香澄もテーブルを立った。
「香澄は別によかったのに…」
制止するまでもなく3人についていくように上がっていってしまうわが妻に、ちょっと寂しい気持ちを残す。
リビングに残ったのは僕と葵、栞、それに恭介の4人。
「2人は恭介とうまくやれてるのか?」
2人にとっても元カレのようなもんだから、部外者とはいえ心配になるのは当然だ。
「ふふ、匠兄ぃったら何を心配してるのよ…?」
含んだ笑顔を向けてくる栞…
その横で恭介はばつが悪そうに顔を歪めた…
それゃそうだろう…
二人がイチャイチャしていた現場に遭遇してしまったのは、まさにこのリビング…
まああれは栞が一方的に迫ったみたいだったけど…