ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 1165
「私も操のことは気にしてるから。匠くんを身籠ってもう二十数年、心配じゃない時はなかった」
「ホントにありがとうございます」
「あとは、椿もあのお家が気に入ったからかな」
椿ちゃんが笑う。
ホントにこの母娘はいい関係だ。
久しぶりの実家。
親父の車がない…出かけたのかな。
「お義父様はいらっしゃらないのかしら?…」
香澄も気になったのだろう…
ガランと空いた駐車スペースを見つめていた…
「買い物にでも出ただけじゃないか?…親父だって孫の顔は見たいに決まっているからね…」
「そうですか?おひとりでレジャーを楽しみたいときとか…うちのお父様はゴルフとか釣りとか好きですし」
和彦さんは多趣味だからなぁ。
「先生はそういう人じゃないもんなぁ」
弥生さんにセリフを先取りされた。
まあ確かにそうなんだけど。
「あら、勢ぞろいで!弥生も来てくれたのねぇ」
インターホンを押す前にお袋が出てきた。
「よっ!久しぶり…大勢で邪魔しに来たぜ!…」
お袋に向かい隙さず声を上げる…
考えてみると、お袋の姿を見るのはあの新庄といたラブホの前以来だ…
あの時のお袋は今とは全く違い…“女の顔”…をしていたもんな;…
しかし今はそんなはずがなく…
「香澄ちゃんも久しぶりね!」
「はい、お母様、お久しぶりでございます」
「あら、もう、子供もこんなに可愛くなって…」
「せっかくだから抱いてみてください」
香澄が腕に抱いていた樹をお袋に託す。
「初孫ね、この歳でって思ったけどやっぱり可愛いわね…」