ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 1130
「別れる時はさぞかし辛かったんでしょうね?…」
「ああ…あの時の僕は、真剣に弥生さんとの結婚を考えていたからね…」
「まあそこまで?…でも真面目な匠さんなら、そう思ったのも分かります…」
「若気のいたりってことなんだろうけど、家族や大学進学なんて何もかも捨ててでも、弥生さんと二人で生活していきたいと思っていたんだよね;…」
今となっては無謀もいいところだ。
高校を卒業したばかりの僕が人妻の弥生さんとうまくやっていけるはずがない…若気の至りとは怖いものだ。
「私も匠さんに似たようなものです」
「香澄は家出していきなり声をかけてきたもんな」
「私も香澄ちゃんくらい若かったらね…」
ううん…弥生さんじゃなくて僕があの時もっと大人だったら…
きっと僕たちそれぞれの人生も大きく変わっていたのかもしれないよな…
「でも何だか羨ましいですは…お二人のことが映画化されるのも分かる気がします…」
それもなんだかムズ痒いんだよなぁ。
しかも弥生さんを演じるのが佳乃さん…和彦さんの新しい奥様になる人なのだから。
「でも、弥生さんと一度、つらい別れを経験してるからこそ、強くなったんだと思います」
「それは私もよ」
弥生さんは柔らかな笑みを浮かべる。
「その強さが認められたから、私たちは再会できたんじゃないかな」
ホントそうかもしれない…
弥生さんとの再会には、運命ってやつを感じずにはいられないもんな…
「僕が香澄と出会っていなければ…弥生さんとの再会も無かったんですよね…」
「あらぁ…それじゃある意味、私も匠さんと弥生さんの再会に一役かった訳なんでぇすねぇ〜…」