ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 1072
「はい…一時は僕の本当の父親は社長じゃないかって…疑ったこともあるんですよね…」
「そう…それでスズタの御曹司が匠くんにそっくりって訳なのね…」
話しの流れで、美恵子さんが僕の実の母親であることも告白していた。
「はい…巧とは一卵性の双子なもんで…」
「…それって…スズタと行き来するようになるこれからは、今までみたいに隠し通せなくなるんじゃない?…」
「その辺は社長…和彦さんって呼ばせてもらいますけど、何か対策は考えてくれていると思います」
「それもそうね…もし明るみに出れば業界激震のスキャンダルだものね」
「まあ、うちうちには知られたことですけどね」
美月さんがスーツを身につける。
一気に現実に戻った気分だ。
「今日も頑張りましょ」
「はい」
美月さんと一緒に会社に向かう…
まさかこんな日を迎えるなんて、昨日までは考えてもいなかったよな;
「あらぁ人だかり…何かのロケでもやっているのかしら?…」
ん?ロケ…
僕は輪を作る人垣の中を覗こうと背伸びする…
まさか朝っぱらからそんなことはあるまい…
何かニュースになるようなことが…
「駅の方ですよね」
「いつもは全然空いてるのよ」
なんとかして状況を把握しようと背を伸ばす。
「えー、大変申し訳ありません、ただ今人身事故の発生の為、全線で運転を見合わせております…」
「うわぁ;こんな通勤時間に迷惑な話しだよな;…」
僕は外人がするみたいに肩をしゃくり上げる…
「どうする?…人身事故だったら普及までに時間が掛かるんじゃない?…」
「でも、タクシーっていっても長蛇の列ですよ;…」
「困ったはねぇ…新庄くんにでも車出してもらう?」