ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 1055
「一応職場の方々にバレないように消臭はしておきましたからねー」
と純ちゃんは言ってくれたから…なんとかなると信じてるけど。
話題を変えようと美月さんに話を振ってみる。
「美玲ちゃん、最近何かおかしい気がするんだけど」
「匠くんも気づいた?新庄くんとも上手くいってないみたいなのよね…」
やっぱりそうか…
それがお袋のせいだと知っているだけに、なんだか申し訳なくも思ってしまう…
「何も同じ部署に来た早々にこんなことになることも無いのにね…2人だって顔を合わせづらいんじゃないかしら?…」
それはそうだろう…
僕たちの部署は部屋で区切られているから、嫌でも顔は合っちゃうもんな…
「そこでね」
エレベーターに乗り込んで2人きりになったところで美月さんが切り出す。
ゆかりさん夏子さんが不在の時はチームリーダーも務める人だ。
しっかりした、凛々しい佇まいだ。
「一番は美玲と新庄くんのことなんだけど、オフィスの席替えしない、って話」
「席替えですか?…」
まあ僕の席は夏子さんの真ん前だし、出来ることならもっと見られない席に移動したいところではあるけど…
「いい考えじゃない?…気分も変わって楽しくなると思うのよね…」
そんな;…小学生の席替えじゃないんだから;…
「まあいいんじゃ無いんですか…美玲ちゃんの為になるなら僕は賛成しますよ…」
「ありがとう。匠くんから賛成がもらえたら助かるよ」
美月さんがニコリと笑う。
きっと学生時代も委員長として仕切っていたんだろうな、この人。
「とはいっても美玲と新庄くんを引き離すのは決まってるから、その残りだからたかが知れてるだろうけど」
「まあ、気分転換だね」
「そういうこと」