ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 1040
流石に売れてる漫画家だけに、その間取りは葉月ちゃんの家より数段に大きかった…
「広いんだね…一人で住んでいるとは思えないよ…」
こんな広い部屋に一人でいると、返って寂しくなりやしないかと心配にもなる…
「あっ、締め切り前にはアシスタントさんが大勢来てくれるんで、このぐらいの広さは必要だろうって編集さんが見つけてくれて…」
「へぇ、ここで作業するわけだ」
「はい」
「アシスタントとか編集の人も女の子なんだ」
「少女漫画雑誌ですしね〜」
なんだか女の園って感じだ。
男の僕が足を踏み入れていいものかと考えてしまう。
「匠さん、飲まれます?」
「いや、さっきもちょっと飲んだし…」
お袋と新庄のことを目撃してから酔いはすっかり醒めているけど、今飲むと悪酔いしそうだ…
「それじゃあお茶にします?…」
「あっいや、やっぱちょっとだけ貰おうかな…」
そうはいっても僕は飲みたかった…
要するに酔わなきゃいいんだもんな…そういって自分を納得させる…
「ふふふ、遠慮せずに、ここなら裸になっても構いませんよ」
「いや、そこまで飲むつもりはないからね…?」
純ちゃんにはあの醜態を見られているんだよな。ちょっと忘れたい。
「私だってそんな強くないんですよ」
「そういえば弥生さんの離れで酔い潰れてたことあったね」
「ええ…弥生さんとせっかくの夜をお邪魔だったかしらぁ?〜…」
「なっ、何言ってんだよ;…弥生さんとのことはもう十年以上も前のことだぜ;…何を今さら;…」
「あらぁ、その後の進展がないと、続編書けないじゃない…」