ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 103
「あ、え、あの、お薬ご用意しましょうか?」
「いや、そういうのじゃないけど、ちょっと…」
「す、すみません、私もご一緒に…」
ホントはついてきてほしくはないけど、舞ちゃんもこのまま突っ立っているわけにも行かないのだから仕方ない。
「あ、あはぁ!いっちゃいますぅ!!」
ソフィアちゃんの甲高い声が響いた。
…それを聞いて、そそくさと退散する僕と舞ちゃんだった…
トイレに行ったところで舞ちゃんと一緒じゃ収められないと悟った僕は、前屈みのまま庭を案内してもらう…
「大丈夫ですか?何処かで休みます?」
…休んだところで、どうなるってもんでも無いんですよ…
「あ〜あそこの庭師さんの家に寄らせて貰いましょ!」
庭師って…
嫌な予感は大抵当たるもんだ…
「あれぇ〜お兄さん!何やってんですかぁ?!」
啓くん…また登場するとは思ってもいませんでしたよ…
「啓くん…どうしてここに…って、ま、ここに住んでんだもんな」
「ええ、まあ…」
「帰ってきたの?」
「あ、いえ、梓ちゃんと、ご家族と一緒にお買い物に行くって言うんで、財布を取りに戻ってきたんです」
それじゃ、と言って、啓くんは足早に去っていく。
「啓さんとはお知り合いで?」
「んー、まあ…彼、うちの妹と付き合ってるみたいで」
「へぇー、偶然とはいえ、そんな縁があるんですねぇ」
股間の興奮も冷めた頃か、僕と舞ちゃんは普通の会話をするにまで戻った。
「でも啓さんって奥様と…」
舞ちゃんの顔が心なしか少し曇った…
啓くんとの仲って、ここでは誰もが知っているんですね…
「まあ男ってさ…時には心と身体が結びつかないことがあるからさ…」
啓くんから話しを聞いているだけに、庇う気持ちは確かにあった…
「そうなんですか…それは柏原さんにも言えることなんですか?…」
首を傾げる舞ちゃんは…めちゃくちゃに可愛いかった…
「…うん、僕も昔、弥生さんと…」
「そうですね、そんなことを言ってましたね」
聞いてたのね。
舞ちゃんは弥生さんがぶちまけた料理の処理に追われていてそれどころじゃないって思ってたよ。
「でも、それが当たり前なのかもしれませんよ」
「まあね」
「私、ここで働き始める前は、彼氏いましたから…」