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磁石
官能リレー小説 - 純愛

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磁石 5

啓太の部屋。

振られた日に来なきゃ良かった・・・。まだ部屋はお姉ちゃんのにおいでいっぱい。写真、歯ブラシ、食器・・・。きっとあの狭いベッドで・・・。そんなことを考えてしまっている亜衣。

啓太は、お湯を沸かし、心を落ち着けているようにも感じる。


しかし、素振りとは裏腹に啓太の心情も揺れていた。
きちんと千佳に説明すれば、誤解が解けないことも無かった。
ヨリを戻せる確証がゼロになった訳ではなかった。

それなのに、ここで亜衣と何かあったら・・・

男の欲望だけで吸い込まれるには、リスクがあまりにも大きい気がしてならなかった。

「茶だけ飲んだら、送っていくな・・」啓太は未練を吹っ切るような口調で亜衣に言った。

亜衣は黙っていた。
そして小さく呟いた。
「お姉ちゃん、本当は啓太君が浮気したなんて思ってないよ。」
「え?」
「他に好きな人ができたの。。。。今、お姉ちゃんのお腹の中には、その人の子供がいるは・・」

「うそだろ?・・」

頭の中がグルグルと回った。
初め、亜衣が何を言っているのか理解できなかった。
亜衣には千佳とは他に、"お姉ちゃん"と呼ぶ存在がいるでは?とすら思った。
しかし、二人姉妹の亜衣には千佳以外に"お姉ちゃん"と呼べる存在がいる訳はなく、
子を孕んでいるのは、間違いなく千佳だった。
それもついさっきまで俺のカノジョだったにも関わらず、

別の男の子供?・・・

俺にとって、それはあまりにも衝撃的なことだった。
俺は千佳以外の女を知らなかった。
高校を卒業してから向かえた、初体験。。。。その相手は千佳だった。
その後カノジョとなった千佳に対して、筋を通すつもりも無かったが
カノジョ持ちの啓太にその機会は無く、敢えて風俗に行くほどに、飢えてもいなかった。

・・ずっと一緒にいたい・・

そもそも結婚を口に出してきたのは、千佳の方からだった。
「大学を卒業したら、ううん。啓太の就職が決まったら結婚して。」
あの言葉はいったい何だったんだ?
それでも、あの時の俺は「そんなのまだ早いよ。。」と言いつつも
その千佳から受けたプロポーズが嬉しく、真面目に考えたりもした。

初めはアパート暮らしでもいいから、将来は一軒家が欲しいよな。
子供はすぐには作らずに、暫くは2人のエッチを楽しもう。
昼間、千佳が1人で寂しいから、犬を飼ってやろう。それともネコがいいかな?
千佳の家は娘2人だから、将来は俺が親の面倒みなくちゃだよな・・・
あ、千佳の両親にはいつごろ挨拶に行けばいいんだ?亜衣ちゃんはいてくれるかな?

・・・・・・・・・・・・・・・・・馬鹿だ

・・・俺は馬鹿だ・・・

啓太は抑えきれない怒りと、込み上げる憤りで、握った拳をプルプルと震わせていた。


「お姉ちゃんばかり責めるのは、止めてね・・・」

亜衣のその言葉に対して、啓太は思わず声を荒げた。
「俺が悪いのかよ!俺のどこが悪かったって言うんだよ!」

そんな啓太に臆することなく、亜衣はぼそりと言った。
「女にもね・・・性欲はあるのよ・・・」

「え?・・」

啓太は思ってもいなかった亜衣の言葉に、戸惑いの表情を浮かべた。
(それかよ・・・)
亜衣が言っていることに、心当たりがない訳でもなかった。
ここ数カ月、千佳とは寝てはいなかった。
そもそもお互いバイトや就職活動が忙しく、週に1回会えれば良い方で、
そのせっかくの時間をセックスに使うのには、啓太は抵抗があった。

最後に寝たのは、何ヶ月も前だった。
その日、千佳は積極的だった。
アルコールもそこそこの筈なのに、自らの力でのしかかり、啓太は服を脱がされた。
股ぐらにしゃがみ込むと、男のそこに愛撫を加えようともしてきた。

『女がそんなことすんなよ!』

啓太は思わずそう言い、千佳の身体を待ち上げると、普段通りのセックスを始めた・・・・

考えてみると、それが千佳との最後のセックスだった。

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