磁石 1
携帯電話が鳴る。
「お姉ちゃんから聞いたよ。振られたんだって?」
彼女の妹・亜衣からの電話。
「うるさい・・・誤解なんだって・・・亜衣ちゃんからも説明してくれよ。」
ついさっき突然、彼女から別れを告げられた。
オレは、まだその場を離れられないでいた。
思い出の公園・・・。もう辺りは暗くなりはじめ、雲行きも怪しくなってきていた。
「お姉ちゃんも悩んでたみたいだよ・・・。泣いてたし。でも・・・」
「でも?」未練のあるオレは、最後のつながりというか、最後の望みの糸を必死につなぎとめてる、そんな感じだった。
「でも、お姉ちゃん、他に好きな人いるみたいだよ・・・怒らないでね・・・寂しかったみたいだから。啓太君が浮気するからだよ・・・」
(浮気なんて・・・)心の中でつぶやいたオレ。
亜衣の姉、彼女・千佳とは高校の同級生だった。
卒業後、付き合いだして3年。今では、お互いバイトや就職活動など、週に1回会えれば良い方であった。
会える日もバラバラで、どちらかの都合が合わないことも多かった。合わせようとしない?すれ違いが続く頃、オレがバイト先の女の子と歩いているのを、偶然千佳に見られてしまっていたのだ。
後は、想像のつく流れだろう・・・。
「まだいたの?」暗くなった公園に聞き覚えのある声が。振り返る。
(千佳? いや違う。見覚えのある制服だったが、そこに立っていたのは亜衣だった。)
「お姉ちゃんじゃなくてごめんね・・・」
姉が卒業した、同じ高校に通っている亜衣の姿は
千佳との思い出を蘇らさせてしまう。
「?あ〜この制服。懐かしいでしょ?制服姿見たことなかったもんね〜。」
落ち込んでいるオレを励まそうと明るく振舞う亜衣。
制服姿を見せようと、ミニスカートなのにくるっと回っておどけてみせる。
やはりオレも男なのだ。落ち込んでいても、目はしっかり亜衣の脚へ・・・オレはいったい何をやってるんだ。
「亜衣ちゃん・・・どうしてここが?慰めに来てくれたのかい?」
「借りてたCDとか返さないといけなかったし。もう私も会えなくなるってことでしょ?」
「別によかったのに・・・そんなCD・・・」
「そんな・・・レベルのCD貸してたの?」