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絶海の彼方で
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絶海の彼方で 9

遠くで鳥が鳴いている。
さざなみの音が流れてくる。
俺たちは無言で、彼の遺体に掘った土を被せて埋める。
身元の分かりそうなものは、残っていなかったので少し大きめの石を、なんとか転がして持ってきて、墓標の代わりにした。

終わった時には、もう日が沈みきる直前で、綺麗な夕焼けの残光に俺たちは照らされていた。
美月ちゃんが採ってきてくれた花を手向け、二人で彼の冥福を祈った。
黄昏が夜にとって代わるこのひと時が、彼が冥府に旅立った事を実感させる。
拠点に帰る道すがら、美月ちゃんがぽつりと言った。

「…他の人達も、みんな死んじゃったのかな」
「誰かが助かってるといいな。せめて、一人でも、二人でも…」
「そうだね」

またいずれ、死体が漂着するかもしれない。彼の死体を見て、俺も少なからず心をえぐられた。美月ちゃんも同じだろう。

「とにかく俺達は生きてたんだ。夕飯にしよう」
「……そうだね、うん」

その日の夕食、といっても手に入れておいた果物を食べただけだが…
さっきの事があったからか、美月ちゃんも何もしゃべらない。
俺も言ってあげる言葉も見つからず、結局無言で食べ終えた。

「とりあえず寝よう。明日は釣りができないかやってみるつもりだ」
「そうね。おやすみなさい」

二人とも、即席の寝床に入った。
また、死体が漂着するかもしれないし、気が重くなる。
でも何か役に立つものが漂着するかもしれないと考えれば、プラマイゼロと受け取るべきなのかもしれない。
そう考えていると、美月ちゃんが寝床の中で話しかけてきた。

「ねえ…起きてる?」
「ああ」
「もし、ずーっと救助してもらえなかったら、どうしたらいいのかな…」

かなり不安そうな声だ。それに俺も、その事は何度か思っていた。
そんな事はないと思いたい。誰かに見つけてもらえるかもしれないし、別の誰か漂着して、コミュニティを築けるかもしれない。
でも、可能性は低いだろうな。
それらの気持ちを隠して、俺は答えた。

「僕は、君の事が大切だよ。もし助けてもらえなくても、ずっと君を支えていくつもりだ」
「えっ?それって…」
「それに俺は、いずれ捜索隊が来ると思ってる。突然爆発するなんて、事故ではなくテロかもしれない。辺り一帯、捜索し尽くすまで捜索すると思うんだ」
「そうよね、そうよね。助け…来るよね」

俺の言葉に、縋るような気持ちで答える美月ちゃん。
だけど、俺は捜索の手が伸びてくる可能性は高いと思っている。昔、ウルグアイ空軍機571便遭難事故のようなとんでもないケースもあったことなどから、現代では旅客機が行方不明になった場合、「見つかるまで探す」のが原則になっているからだ。

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