海から始まる恋 21
英人を助けようとして触ったこともない剣まで出して戦ったというのに、取り込まれた英人はこんな調子だ。
これならあのクラゲはしばらく放置していても良かったかもしれない。恐らくは中の人間を消化してしまうような危険性もないだろうし。
「あ、英人君、ここにいたんだ。無事でよかったぁ」
詩織さんが近くに戻ってきた。
「詩織さん、」
英人は特に何の感慨もなく言った。
「英人、詩織さんにお礼を言え」
「え?」
「怪物から助けてくれたんだぞ」
怪物のことはよく分からないが、詩織さんたちが彩さんを乗っ取ってこの怪物を出現させたらしい存在と戦ってくれたのは多分事実なのだろうと思った。
英人は自分が全裸なのも忘れて二人に頭を下げていた。
「隠さなくていいのか?」
「よくわからないがここは異世界とやらなんだろ?それに今更恥ずかしがる関係かよ」
ここに居る全員が一度はセックスまで行ってたもんな…。
そう思うと、僕もちょっと海パンの中が膨らむ感じがした。
でも、詩織さんは次にこう言ったので一旦それは収まる。
「あのね、さっきのコーチと話したんだけど、一馬君、マイクロバスに乗って元の世界に帰れるよ。多分、英人君も、乗れると思う」
詩織さん達とはこれで最後になるのだろうか。元の世界に帰れるのは嬉しいが、それが引っ掛かった。
コーチはまだ水着のままだった。
やたらと布面積の少ないもので、部員達のとよくにていた。競技用の特殊素材の物なのだろうか。
「もしあれが異世界の素材だったらズルしてる事になるよな…」
英人が言う。確かに速く泳げる魔法の素材みたいなものを使っていたら僕達の世界では凄い記録が出せるだろう。
「あの肉体美を見てよ、あのコーチはそんなものなくても水泳のプロだよ」
僕は反論した。