海から始まる恋 19
走りながらも彼等について考える。
えたいの知れない化け物に自ら飲み込まれようとしているのは異様としか言いようがない。
だが、中の水泳部員の様子を見てしまえば話は別だ。
恐らくは巨大クラゲの中はゼリーのような物で満たされているらしい。
僕が詩織さんと店員のところに着く直前、詩織さんと店員は同時に彩さんに光線を発射していた。そして、彩さんは、倒れた。
「詩織さん、あのクラゲ…」
「大丈夫、彩を乗っ取ってた、まものは倒した。クラゲもゆっくり崩れていくよ」
僕は振り返った。クラゲは動きを止めていた。そして、脚が少しずつ短くなって、傘は縁から溶けるように小さくなり始めていた。
このまま男子部員達が空から落ちてくるのではないかと思ったが、そうではなかった。僕の真上に居る彼等は様々に身をよじりながら浮いている。
そしてクラゲ内部のゼリーまみれの男子部員達がゆっくりとハチミツが垂れるみたいに降ってくる。中のどろどろとした液体により落下速度が落ちたのだ。
心配した他の部員達が殺到してきた。
その落ちてきていた部員たちの中に、やや体の小さい男が混じっていた。
「英人!」
英人だ。クラゲに閉じ込められていたのか。僕は英人に駆け寄る。詩織さんも続いて来てくれた。
「んー、あっ…」
「英人!大丈夫か!」
部員達も集まってきたので僕達は密集し、粘液まみれになってしまった。
水泳部員を包んでいたそれは悪い感触ではなかった。中に取り込まれていた部員が次々に射精したのもわからなくもない。
英人は何かに掴まろうとしたのか、意識朦朧のままに僕の水着を掴んだ。