メイドさんに不可能はない 4
お風呂の中で莉菜さんとは他愛のない、普通の会話をして楽しんだ。
家出はずっと一人だったから、こうして誰かと会話できることが素直に嬉しかった。
「お身体拭いてあげますね」
「あっ…」
莉菜さんがバスタオルで丁寧に僕の身体を拭いてくれた。
その時、ちょっと、男として、アレな妄想が膨らんでしまい…莉菜さんにも下半身を見られてしまった。
莉菜さんはそんなある部分の反応にも、余裕の笑顔を見せていた。
莉菜さんが身体を拭いてくれた後、脱衣所にあった新品らしいコットンのパジャマにそでを通した。
そう言えば莉菜さんが家に来た時、何か大きな袋を持っていたが、もしかしてその中に入っていたものの一つだろうか。何を察して買ってきたのか与えられたのかはわからないけど、すごくありがたいなと思った。
夜9時。
外は雨が降り出した。天気予報の通りだった。結構強い雨で、大きな音が響いていた。
「ご主人様、お隣よろしいですか」
「ええ」
莉菜さん、お風呂から出た後も、メイド服姿だった。
「莉菜さん、ずっとメイド服なんですか」
「ええ、これが私に用意された仕事着なので」
微笑んでそう言う莉菜さん。もちろんメイド服姿は似合っていて素敵だけど、ずーっとその姿というのもなんだか。替えがあるのかとか変な想像しちゃいそうだ。
「莉菜さんの私服姿も見たいです」
「ふふ、私の服なんて別に…」
柔らかな笑顔を崩さない莉菜さん。ただ少しだけ、ほんの一瞬だけ、寂しそうな表情が見えたような気がした。
「じゃあ、一緒に買いに行きません?」
思い切って提案してみる。
莉菜さんの、頬が少し赤く染まる。
「ご主人様のお選びになった服だったら……そうですね、お給料が振り込まれたら考えてもいいかもしれません」
「うん。それで。そうしよう。ホントは僕が買ってあげられたらいいんだけどね…」
莉菜さんのお給料は派遣会社が支払っている。
「気にすることはないです」
莉菜さんは僕の頭を優しく撫で、微笑んだ。
一日が終わろうとしている。
お昼に莉菜さんが来て、いろいろな会話をして、食事もして、お風呂に入って。
久しぶりに、心から楽しい気分になった。
莉菜さんのこと、もっと知りたいと思った。
これから一緒に生活することでわかることもたくさんあるはずだ。
「そろそろ寝るかな…」
「寝室も整頓しておきました。お休みなさいませ、ご主人様」
ずっと働かせていたのが申し訳ないけど、莉菜さんは疲れた表情を一切見せず、微笑んでそう言った。