堕天使の成長 7
それから年月が経つにつれ、クロエの身体は女として急激に成熟していった。
クロエが再び日本に来る少し前の14歳の頃になると、大人びた顔つきに天使のような美しさに清楚さと気品を持つ美少女へと成長していた。
だがその身体は清楚さや気品とは正反対の卑猥かつ扇情的な爆乳巨尻の成熟した女の身体となっていたのだ。
クロエの母国人は早熟な方だが、ここまで早熟なのは希だった。
そしてその成長と共にクロエの中に何故かまた日本に行かねばならないと言う思いも大きくなっていた。
その理由は分からない。
まだトラウマも強くあるし、あれ以来男が苦手と言うか恐怖感すらあった。
だが、何故か日本にいかねばならぬと言う気持ちばかりが募り、それは強い焦燥感となっていく。
それ故にクロエは両親を説得した。
最初はかなり難色を示した両親だったが、クロエの粘り強い説得で折れた。
あの事件はクロエだけでなく両親にもトラウマだったが、クロエはあえてあの町を留学先に選んだのだ。
それが自分とあの事件の決着をつけれるような気がしてたからだ。
こうして中学三年生の新学期よりクロエの留学生活が始まったのである。
日本語に関しては学者であり日本文化研究の大家である父から教わっていたし、受け入れ先の父の友人がしっかり教えてくれた。
そして、その父の友人の息子こそが莉音だった訳である。
以前の訪問ではクロエと莉音は丁度すれ違いだった。
なので再来日が初めて会った訳であるが、莉音を一目見てクロエは何かしらの運命を感じるぐらい身体が震えた。
一目惚れとか単純なものではない・・・
本当に自分の運命に関わる重要な存在のような、そんな大きな存在に出会ったように感じた。
「……ふぅ」
今日もまたあの公園で夕暮れ、クロエは一人ベンチに腰かけた。
「今日は、何もないな…」
昨日感じた違和感、不自然さは全くと言っていいほど感じなかった。
一瞬、莉音がいないから?なんて思ったが、やっぱり気のせい、と思い直す。
「…帰ろう」
エレベーターが到着するのを待っていると、よく見知った顔がやってきた。
「あらクロエちゃん、今帰りなの」
「はい」
磯崎杏梨、莉音の母親だ。
莉音にそっくりの可愛らしい女性で、年齢を感じさせずおばさんと言う雰囲気は無い。
若奥様とか幼妻と言う雰囲気を今だに持ち続けてる人だ。
莉音がマジ天使なのも、この親あっての事と納得できてしまうのだ。
「お探しものは見つかったのかしら?」
そして何と言うか恐ろしく勘がいい。
「色々迷い、さ迷ってますわ」
「若いっていいわねぇ・・・沢山迷ってみればいいと思うわ」
謎かけのような会話。
クロエはこう言う会話は嫌いでない。
何より事情を察しつつ見守ってくれてる様子が有難い。
「莉音くんはどうしてますか?」
「学校から帰ってばたんきゅうよ・・・もしかしたら王子様のキスで目覚めるかもだから試してみる?」
話題を変えて莉音の事を聞いてみるが、不意討ちのように際どい言葉で返してくる。
こう言うのはちょっと困るが、これしきで顔色変えていては彼女と付き合っていけない。
「どちらかと言うと私が王子様に導いて欲しいですわ」
「おや、うちのお姫様ではご不満のようで」
割と際どい事も言われるが、会話自体は楽しかったりする。
エレベーターに乗って自分たちの部屋の階に到着する。
「では…」
「相談があったらいつでもいらっしゃいね」
「はい…ありがとうございます」
際どいやりとりは時に冷や汗をかくこともあるけど、家族と離れて暮らすクロエにとって親身になってくれるありがたい存在なのである。