閉鎖無限リゾートホテル 3
その声に俺は我に返った。
この状態・・・
心配なのはママと真澄だ。
彼女たちが男を求め、誰かと交わってるかと思えば心配でたまらない。
だが、伊藤さんはどうする?
このままだと彼女も餌食になりかねない。
乗りかかった船とは言え、見捨てて行くのも気が引ける。
そんな俺の目に飛び込んできたのは消火器。
俺は足に縋り付こうとする女を蹴散らして消火器を取ると、伊藤さんに抱き付く男に目がけて発射。
使い方はちょっと前に火災訓練で実習したからホースを外して留め金を抜きスムーズに行けた。
ブシャーっと噴射で怯む男。
俺は周囲にも振りまきながら伊藤さんに声をかける。
「一緒に逃げるよ!」
伊藤さんにもかかったけど、なんとか振りほどいてこっちに。
俺は消火器を捨てて伊藤さんの手を取りその場から走り出した。
兎に角、ママ達と合流しないと駄目だ。
このままだと彼女達も欲望のままに行動しかねない。
それだけは何としても防ぎたかった。
うしろを振り返ると、さっきの人たちは追いかけてこなかった。
「あ、あの、さっきはありがとう。あなただけ逃げてもよかったのに。」
「そういうわけには・・。あれ?また、迷った。」
「ねぇ、あなたの名前は?」
「牧野拓馬です。」
「拓馬君。そろそろ、その手を離してほしいんだけど。」
俺は伊藤さんの手を握ったままだった。
「あっ、ごめん」
「まぁ、助けてくれたからいいけどね」
彼女は笑いながら言う。
そんな笑顔は結構可愛らしいし、ママや真澄程で無いけど美人で胸も大きい。
「ごめんだけど、人を探したいのと安全な場所までいきたいけど協力してくれる?」
「ええいいわ、助けて貰ったし乗り掛かった船だしね」
とりあえずママと真澄を確保しなくちゃならない。
彼女達が襲われる最悪の事態だけは避けたい。
「あ、あのね。さっきあなたに出会う前に、レイプ魔の男を見かけたような気がするの。走ってる姿を遠目から一瞬見ただけだったから絶対見たっていう自信はないけど。」
「レ、レイプ魔。そんな危ない人がこのホテルの中に。」
背中に嫌な汗が流れ、心臓がバクバクする。
頭も締め付けられるような痛みが走り、思わずしゃがみこむ。
物凄い吐き気もしてきた。
そう・・・
ママと真澄がそんな奴の餌食になると想像した瞬間、俺はこうなって震えが止まらなくなった。
そんな事が起こる前になんとかしないと・・・
「拓馬君・・・大丈夫?!・・・」
伊藤さんが心配してくれる。
俺はそれを手で制して立ち上がる。
「早く探さないと・・・・」
「じゃあ、急いでさっき会った場所近くまで戻りましょ!・・・危険だけど2人を探さないと!」
流石にスタッフだけあって伊藤さんが先導してくれる。
俺も気分が悪くなるのを無理矢理押さえて彼女について行ったのだ。