牝奴隷たちと御主人ちゃん 90
エミリーは、サラのそばにいて胸がときめいていた。エミリーはレズビアンだからだ。
教会の暮らしでは男性は孤児の女子を慰み者にする存在であり、孤児の女子たちは信者の男性ではなく仲間の女子と恋をして肉体関係を持つことがあたりまえなことのようになっていた。
男子の孤児たちは男性信者と女性信者のどちらにも奉仕させられ、自慰を禁じられていた。性欲は信者への奉仕で発散するように教え込まれたのである。
男子の孤児と女子の孤児は分けられて暮らしていて、女子には自慰を禁じたりはしなかった。
一緒に暮らしているうちに親しくなった女子と、抱きあったりキスしたりして、愛したり愛されたい願望を満たそうとしていた。
教会から出てからはレズビアンであることを隠しているが男性不信で、エミリーは男性にはどうしても性的な興味が持てないのだった。
サラに抱かれたいとエミリーは思うけれど、自分からは積極的に手が出せない。
気持ち悪がられて避けられるぐらいなら、黙ってそばにいるほうがいい。
シャロンよりもサラのほうに胸がときめくのはなぜか、それはエミリーにもよくわからない。
ガルディアスが目をさましたふりをして椅子から立ち上がると「おやすみ」とギルの部屋から出ていく。そこでエミリーも自分の部屋に帰ろうと思い立ち上がるが酔いのせいでうまく歩けない。
「部屋までおくるわ」
サラにエミリーはおんぶしてもらった。
(サラさん、香水つけてるのかなぁ、なんか、いい匂いがする……ふふっ、なんかしあわせ)
椅子で本当に寝てしまったギルをオルガとマリンが協力してベットに移動させた。
「どんな夢をみてるのかしら」
「勃ってますね」
ガルディアスが儀式の間に来たとき、シャロンの石棺がネコマタのキヨマサによって開かれようとしている瞬間だった。
「ガルディアス、君の探しているリリムはあの石棺の中にいるシャロンに融合した」
死霊祭祀書を持った少年はガルディアスの前に来て微笑したまま言う。
「融合?」
「ガルディアス、まだシャロンは目をさまさない。それまで死霊祭祀書から過去に何があったのか教えてもらうといい」
ガルディアスは死霊祭祀書を手渡された。
「空いている石棺に寝そべって、少し寝てる間に夢をみせてくれるからね」
ガルディアスは石棺に入り死霊祭祀書を胸の上に置いて寝そべっていると、ネコマタのキヨマサと少年が蓋を閉めた。
ガルディアスが王位を継承した戴冠式の日にエレアナは身重の身ながら、訪れたのは頭蓋骨などが棚に陳列されている地下室である。
「クラウバルト、ここでよいのですね」
(ああ、ここならば降臨の儀式の秘密を探り出せるだろうからな。お別れだ、エレアナ)
書物に泣きながらキスをしたエレアナは死霊祭祀書を大聖堂の地下、神聖ベルラント王国の王族や聖職者の遺骨を安置した石室に隠した。
ヤザンがエレアナの肩を抱いて大聖堂から出ると、そのまま二人は神聖ベルラント王国の首都から逃げ出したのだった。